光+超音波ダイナミック療法

赤色発光ダイオードによる光エネルギー、超音波ビーム、感作剤を用いて選択的にがん細胞のみを破壊する治療法です。

光+超音波ダイナミック療法の歴史

主なリスクと副作用など

数年前より開発されてきた非常に新しい治療であるが、そのみなもとは光線療法にさかのぼる。

1904年 光線療法は初めて皮膚ガンを治療するのに使われたが、優れた光感作剤の欠如により70年間が何の進歩もなく過ぎさってしまった。

1975年 Photofrinと赤色ライトが乳ガンの治療に使われた。光線療法は現在19の先進国(アメリカ、カナダ、フランス、日本等)に承認されている。

しかし、光線は体表面(最大限1.5cmまで)にしか到達しない為、深部のガンを治療するのは内視鏡と併用しない限り不可能であり、これが最大の問題であった。 アメリカFDAはPorfimer sodiumを食道ガン、肺ガン(非小細胞肺ガン)に対して承認した。また同時に食道ガンの前ガン病変であるバレット食道の治療も2003年に承認している。 ごく最近、この光線療法の最大の欠点を克服する為、光線の代りに超音波が使用され始めた。

超音波は基本的に肝臓や赤ちゃんを見るのに使用されており、全く無害である。超音波の特性として生体内を通り抜けるので、表面にあるガン(例えば皮膚ガン、乳ガン)以外に深部にあるガン(肺ガン、前立腺ガン、肝ガン、膵ガン等)もほとんどすべて治療できるという最大の利点がある。

光+超音波ダイナミック療法のメカニズム

光ダイナミック療法は細胞レベルで光エネルギーを化学エネルギーに変換することができ、これがガン細胞を選択的に破壊します。

感作剤はガン細胞のみに取り込まれます。そして超音波ビームまたは赤色発光ダイオードによる光エネルギーを照射します。
  • ステップ1 感作剤の投与
  • ステップ2 感作剤は選択的にガン細胞に取り込まれる。正常細胞からは速やかに排出される。
  • ステップ3 光+超音波ビームにより感作剤は活性化され、高エネルギー分子に変わる。この高エネルギー分子が酸素と反応してフリーラジカル酸素と他のフリーラジカルを生ずる。
  • ステップ4 発生したフリーラジカル酸素、また他のフリーラジカルが細胞レベルでガン細胞のみを破壊する。したがって腫瘍のタイプ・組織を知ること、あるいはガンの正確な存在場所を知ることは、必ずしも必要でない。この治療は必要に応じて何度でもくり返し施行できる。

光+超音波ダイナミック療法の優れた点・副作用

優れた点

  • 最近極めて優れた薬剤が開発された、毒性のない感作剤。
  • 非浸襲性の手技。患者さんは治療に伴う苦痛をほとんど感じない。
  • 感作剤はガン組織のみをターゲットにする。正常組織は温存される。
  • ターゲットのガン組織は細胞レベルで超音波または光によりエネルギーを受け、一重項酸素とフリーラジカルが生じる。
  • 急速にガン細胞、ガンの毛細血管を破壊する。病理学的所見は腫瘍の凝固壊死、変性、発症反応
  • 高い有効率。論文は少ないものの抗がん剤と同等の有効率と考えられている。
  • 外来で施行できる治療。基本的に入院は必要ない。
  • 標準治療とも併用可能
  • 感作剤、また光+超音波ダイナミック治療に対するガンの耐性化は起こりにくい。何回でも治療が可能。
  • 全身治療も可能
  • 最小限の副作用

主なリスクと副作用

稀に以下の症状が起こることがあります。

  • がん組織の破壊による症状とそれに伴う炎症反応と痛み。
  • 軽い吐き気
  • 全身倦怠感
  • 炎症反応に伴い胸水、腹水を認める患者さんには、一過性の胸水、腹水の憎悪。

注意事項:治療中また治療後1週間は直接的な日光は避ける必要があります。

光+超音波ダイナミック療法の適応がん

体表面にある癌(がん)

※光ダイナミック療法

乳癌 皮膚癌 メラノーマ 咽頭癌(喉頭癌) 耳下腺癌

体深部にある癌(がん)

※光+超音波ダイナミック療法

子宮癌 卵巣癌 悪性リンパ腫 肺癌 転移性肺癌 肝癌 転移性肝癌 悪性脳腫瘍 骨腫瘍 骨転移 前立腺癌 肉腫 大腸癌 胃癌 膵癌 など

※もしガン組織が大血管を巻き込み、大血管の血管壁を浸潤している場合、ガンの破壊に伴い大出血を起こすリスクがある。これはどの治療でも共通であるが、治療対象とはならない。

平成25年12月7日に福岡大学で行われた第17回日本バイオ治療法研究会 学術集会で、当院と共同研究を進めている徳島大学大学院ソシオテクノサイエンス研究部 宇都義浩准教授と当院の乾利夫院長が「マクロファージ活性化療法(GcMAF)、超音波ダイナミック療法およびホルモン療法での乳癌の治療」について発表いたしました。

宇都准教授発表資料
乾院長発表資料(英語)

光+超音波ダイナミック療法と併用する治療

・マクロファージ活性化療法
・高気圧酸素療法
・オゾン療法
・温熱療法

論文

進行した乳癌に対する光+超音波ダイナミック療法(PDF)
光+超音波ダイナミック療法による4年間で115の症例(PDF)
光+超音波ダイナミック療法後の客観的な成果指標(PDF)

主なリスクと副作用など

主なリスクと副作用:稀に光による軽い皮膚の日焼、時に超音波照射による軽い骨の痛みが起こることがあります。

その他重要事項:当該製品は未承認医薬品等です。ポリフィリン研究所(日本)より葉緑素を購入し、院内で製造しております。また国内において承認医薬品等はありません。

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